人間とAIは愛し合えるのか

『ザ・クリエイター 創造者』 2023年  
主演 : ジョン・デヴィッド・ワシントン   監督 : ギャレス・エドワーズ

21世紀の後半が舞台の本作。AIが米ロサンゼルスに核攻撃を加えたことで、AIを敵視する米国らとAIを擁護するニュー・アジアとの戦いが激化する中、元特殊部隊員のジョシュアは、人類を壊滅させる兵器を創り出した“クリエイター”の暗殺に向かう。しかし、彼は、そこで見た目は天使のような少女ながら人類の脅威となるAI兵器(アルフィー)に出会い、大きな渦の中に巻き込まれて行く・・・。監督は、『GODZILLA ゴジラ』(2014)や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)などで知られるギャレス・エドワーズ。『イコライザー THE FINAL』(2023年)
で、相変わらずいい味を出しているデンゼル・ワシントンの息子 ジョン・デヴィッド・ワシントンがジョシュアを演じている。また、AI軍のリーダー ハルン役を務める渡辺謙も存在感がある。しかし、何といってもアルフィー(マデリン・ユナ・ヴォイルズ)が切なくも可愛らしい。


人間とAIの違いは?

人類とAIとの確執や争いをテーマにした作品の多くは、発達し過ぎたAIを単純に人類の脅威として描いてきた。しかし、本作は、人類とAIの違いはいったい何なのかを観客に問いかけてくる。確かに、身体において両者は全く異なる。でも、精神(心)はどうなのか。アルフィーを助けようと決意したジョシュアの行動からは、彼が迷いながらも、この問いに出した一つの答えが読み取れるのではないだろうか。
 また、米国の巨大な兵器が、東南アジアを思わせる村々でAI兵士や住民に襲い掛かるシーンは、ベトナム戦争を髣髴とさせる。人類の存続という“大義”のためには何をやっても許されるのか。映像のクオリティーは申し分ないが、最近のSF作品を見慣れた人たちは、脚本も手掛けたエドワーズ監督がこの作品に込めたメッセージにより心を惹かれるだろう。

ラストシーンに注目!

 最終的に、ジョシュアはアルフィーと一緒に米軍の基地兼兵器「ノマド」に乗り込んでいく。これから観る読者のためネタバレはできないが、ラストシーンのAngle’s smileは何を意味するのか。そして、天国に行けるのは何者なのだろうか。エアロスミスの『ドリーム・オン』やディープ・パープルの『チャイルド・イン・タイム』なども効果的に使われているこの野心的SF大作は、初見ではちょっと理解できない部分もあったので、もう一度、じっくりと鑑賞してみたい作品だ。

ザ・クリエーター/創世者 本予告編:出典 Films Now Movie
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この記事を書いた人

建築家・デザイナー・学芸員・市場アナリスト・・・爺達からの遺言。現代社会と過去の時空を彷徨い、明日を生きるためのメッセージを送っていきます。

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