映画人の魂が感じられる秀作                      

『哀れなるものたち』 2023年  主演 :エマ・ストーン 監督 :ヨルゴス・ランティモス

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エマ・ストーンがオスカーを獲得 ブラボー!

第96回アカデミー賞の各賞が発表され、日本では「君たちはどう生きるか」と「ゴジラ-1.0」のダブル受賞で盛り上がっているが、私はエマ・ストーンが主演女優賞を獲得したことを知り、心の中で「ブラボー!」と叫んだ。先日、彼女が主演した「哀れなるものたち」を観て、ある意味、哀れな改造人間のベラという大変難しい役をまさに体を張っ
て演じたエマに敬意さえ感じていたからだ。

 エマに関する私の最も古い記憶は、映画評論家のおすぎ氏が、「アメイジング・スパイダーマン」(2012)にヒロインとして出演した駆け出しの彼女のことを「目が離れて不細工」のような表現で酷評していたことだろうか。しかし、その後、エマは「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014)などキャリアを重ね、「ラ・ラ・ランド」(2016)で20代ながらアカデミー賞主演女優賞に輝いた。こんなスター街道を驀進している彼女がベラ役に挑戦し、見事に演じきり、2つ目のオスカーを手にした。やはり、ブラボー!と声を上げるしかない。

共演者もスタッフもすばらしい チームの勝利!?


発表直後、ステージに上がったエマは感情の高ぶりが収まった後、スタッフ一丸となって作品を創り上げたことが評価につながったことを強調していた。確かに、ベラを創造した外科医ゴッド役のウィレム・デフォーの怪演、ベラをたぶらかして旅行に誘いながらベラの虜になってしまうプレーボーイを演じたマーク・ラファロのこっけいさ、娼館、
主人役のキャサリン・ハンターの存在感など、共演者のすばらしさも見逃せない。
 そして、ヴィクトリア朝時代のロンドン、リスボン、そしてパリを舞台に展開するこの作品のリズムも独特なものがあり、奇妙でグロテスクかつ、ユーモラスで悲哀も感じられるストーリーにマッチしている。これは、エマと「女王陛下のお気に入り」(2018)でもタッグを組んだランティモス監督の手腕によるものだろう。
 本作の原題は「Poor Things」。「哀れなるものたち」という邦題が適切かどうかは分からない。ストーリーの設定は破天荒だし、作品のテーマもつかみづらい。ただ、出演者の演技は極上だし、アカデミー賞では美術賞、衣装デザイン賞そしてメイクアップ&ヘアスタイリング賞も受賞しているように映像も華やかだ。


 これから多くの人に観てもらいたいので、今回、プロットにはほとんど触れていない。エマとスタッフたちが果敢に創り上げた作品を劇場で楽しんでほしい。いわゆるエンドロールがない幕引きも面白い。

出典:サーチライト ピクチャーズ
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建築家・デザイナー・学芸員・市場アナリスト・・・爺達からの遺言。現代社会と過去の時空を彷徨い、明日を生きるためのメッセージを送っていきます。

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