『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナスワン)』 2023年
主演 : 神木隆之介 監督 :山崎貴
すべてを失った戦後の日本にマイナスをもたらす悪魔
第二次世界大戦末期、敷島浩一(神木隆之介)は特攻隊として出撃したが、死ぬのが怖くなり、機体が故障したと偽って、小笠原諸島・大戸島の守備隊基地に着陸した。その晩、地元でコジラと呼ばれる怪獣が島を襲い、敷島は恐怖のあまり、機体に装備された20ミリ砲を撃つことができず、守備隊員のほとんどが殺されてしまう。 終戦後、日本に戻ってきた敷島は、空襲で両親が死んだことを知る。失意の中、バラック街を歩いていた彼はひょんなことから、亡くなった女性から託された赤ん坊を連れた大石典子と出会い、3人の奇妙な共同生活が始まる。この典子を『シン・仮面ライダー』(2023)で、クールなヒロイン役を務めた浜辺美波が好演している。
そして、復興がやや進み光がほのかに見えてきた東京にゴジラが上陸。再び街は破壊され、多くの人々が命を失い、典子も犠牲に・・・。
「まだ、戦争の終わっていない」復員兵たちの戦い
日本軍は武装解除され、米軍はソ連を刺激することを恐れてゴジラに手を出せない中、大戦で命を落とした仲間たちへの申し訳なさを引きずっている復員兵らが、愛しい人たちを守るために立ち上がる。ゴジラ撃退作戦の立案者は、戦時中、兵器の開発に携わっていた野田健司(吉岡秀隆)。戦後処理の特殊任務で野田と知り合った敷島も敵討ちと「自分の戦争を終わらせる」ために参加する。そして、敷島は、火器の通用しないゴジラに対する突飛な作戦において、戦闘機でゴジラを海に誘導する役目を買って出ることになる。
死を見過ぎてしまった人々の泥臭い人間ドラマ
ゴジラ70周年の記念となる本作は、ハリウッド版GODZILLAや日本アカデミー賞で最優秀作品賞を獲得した「シン・ゴジラ」(2016)と全くテーストが異なり、泥臭い人間ドラマだ。初めのうちは、チープ感も少しあるが、ストーリーが進むにつれ、敷島ら復員兵たちに感情移入してしまう。ゴジラが“活躍”する場面はそれほど多くないし、予定調和的な展開と言えなくもないが、自然と胸が熱くなった。これは、私が東京大空襲を経験し
た父をもつ人間だからなのか。最後に、敷島はゴジラの息の根を止めようと、爆弾満載の戦闘機でゴジラの口に突撃する。
出演者は他に、戦争で3人の子供を亡くした敷島の隣人役の安藤サクラや特殊任務を担う船の船長を演じる佐々木蔵之介ら。銀座で大暴れするゴジラに翻弄される群衆役で、ベテラン俳優がカメオ出演しているのも楽しい。エンドロールとともに流れるゴジラのテーマと巨大な足音が、シリーズ第一作『ゴジラ』(1954)を予感させる。
コメント